今週は、1学期試験前の授業の総決算をして、
生徒のポートフォリオの確認、試験の作成と
慌ただしく時が流れたように感じます。アンケート
調査の統計処理で神戸サテライトで半日パソコンの
前に座って、精根尽きつきたのも今週です。週3回の
サテライトの授業もあり、今週は修論の研究打ち合わせ
も一対一で2時間あまり…、ほんとうに多忙な1週間
でした。サテライトの授業が終わって帰宅すると疲労感
はシャワーとビールだけでは解消できず、毎晩熟睡
できています。ダイエット効果も大きいようです。
「過負荷」、まさに今週はオーバーロードでした。
*
昨晩、神戸駅に到着すると、改札近辺で人だかりが
出来ていました。ダイヤの乱れかなあ〜と思っていると
須磨駅の近くで人身事故があった旨のアナウンスが流れ
ました。

最近、毎日のように鉄道の人身事故の報に接します。
大きな事故でなければ、「〜分間運転見合わせ」や
「〜万人に影響」という取り扱いだけで、事故そのもの
に関しては、あまり触れられないことがあります。
昨晩の事故も、事故の状況がわからないままで生命に
別状はなかったのかとか、そういう説明がないままに、
淡々と運転見合わせや再開の目処に関してのアナウンス
が続き、乗客の方々も、「生命は大丈夫だったのですか?」
と駅員に問い合わせるのではなくて、電車が止まったことに
対するイライラを駅員にぶつけたり、振り替え運転や再開
の問い合わせをしたり・・・。

事故の当事者のご家族や関係者の方々にとっては、
大きな鉄道事故であっても、たった一人の踏み切り事故
であっても、どちらもショック・衝撃度は大きいと思うの
ですが,他の方々にとっては多くの被害者を伴う大きな
鉄道事故でもない限り「迷惑」にしか感じないように
なってしまっているのかなあ〜と昨晩思いました。
新快速電車は復旧が遅れたようで、神戸駅には、
新快速がドアを開けたままホームに止まっていました。
*
今週の教育心理学の授業では、「自明性を問う」という
ことが大きなテーマでした。その背景には「常識は身体化
されている」ということに対して 「常識」自体を問うこと
があり、それはまさに「常識に捉われること」を問う
ことであるわけです。
今日取上げた作品は、ガーフィンケルの「カラートラブル」
です。そしてカフカの「掟の門」。
カフカの「掟の門」は、何度読んでも私にとっては過負荷
だなあ〜と再認識しました。
〜 掟の門 / カフカ 〜
掟の門前に門番が立っていた。そこへ田舎から一人の男が
やって来て、入れてくれ、と言った。今はだめだ、っと門番は
言った。男は思案した。今はだめだとしても、あとでなら
いいのか、とたずねた。
「たぶんな。とにかく今はだめだ」
と、門番は答えた。
掟の門はいつもどおり開いたままだった。門番が脇へよった
ので、男は中をのぞきこんだ。これをみて門番は笑った。
「そんなに入りたいのなら、おれにかまわず入るがいい。
しかし言っとくが、おれはこのとおり力持ちだ。それでも
ほんの下っぱで、中に入ると部屋ごとに一人ずつ、順ぐりに
すごいのがいる。このおれにしても三番目の番人をみただけで、
すくみあがってしまうほどだ」
こんなに厄介だとは思わなかった。掟の門は誰にも開かれて
いるはずだと男は思った。しかし、毛皮のマントを身につけた
門番の、その大きな尖り鼻と、ひょろひょろはえた黒くて
長い蒙古髯をみていると、おとなしく待っている方がよさそう
だった。門番が小さな腰掛けを貸してくれた。門の脇にすわって
もいいという。男は腰を下ろして待ちつづけた。何年も待ち
つづけた。その間、許しを得るためにあれこれ手をつくした。
くどくど懇願して門番にうるさがられた。ときたまのことだが、
門番が訊いてくれた。故郷のことやほかのことをたずねて
くれた。とはいえ、お偉方がするような気のないやつで、
おしまいにはいっつも、まだだめだ、と言うのだった。
たずさえてきたいろいろな品を、男は門番につぎつぎと
贈り物にした。そのつど門番は平然と受けとって、こう
言った。
「おまえの気がすむようにもらっておく。何かしのこした
ことがあるなどと思わないようにだな。しかし、ただそれだけ
のことだ」
永い歳月のあいだ、男はずっとこの門番を眺めてきた。
ほかの番人のことは忘れてしまった。ひとりこの門番が
掟の門の立ち入りを阻んでいると思えてならない。彼は
身の不運を嘆いた。はじめの数年は、はげしく声を荒げて、
のちにはぶつぶつとひとりごとのように呟きながら。
そのうち、子どもっぽくなった。永らく門番をみつめて
きたので、毛皮の襟にとまったノミにもすぐに気がつく。
するとノミにまで、おねがいだ、この人の気持ちをどうにか
してくれ、などとたのんだりした。そのうち視力が弱って
きた。あたりが暗くなったのか、それとも目のせいなのか
わからない。いまや暗闇のなかに燦然と、掟の戸口を通して
きらめくものがみえる。いのちが尽きかけていた。死の
まぎわに、これまでのあらゆることが凝縮して一つの問い
となった。ついぞ口にしたことのない問いだった。からだの
凝縮がはじまっていた。もう起き上がれない。すっかり
ちぢんでしまった男の上に、大男の門番がかがみこんだ。
「欲の深いやつだ」
と、門番は言った。
「まだ何が知りたいのだ」
「誰もが掟を求めているというのに・・・」
と、男は言った。
「この永い年月のあいだ、どうして私以外の誰ひとり、
中に入れてくれといって来なかったのです?」
いのちの火が消えかけていた。うすれていく意識を呼び
もどすかのように門番がどなった。
「ほかの誰ひとり、ここには入れない。この門は、おまえ
ひとりのためのものだった。さあ、もうおれは行く。
ここを閉めるぞ」